電車温泉日帰り旅行記

ある日のこと。

「秘境の温泉って、行ってみたくない？」

「秘境！ いいねえ。どこ？」

「山梨の山奥。前に行って、すごい良かったんだよね、温泉が。」

というわけで、本日西さん北さんが目指すは奈良田温泉です。奈良田温泉行きのバスが出るのはJR下部温泉駅。そこに向かう身延線に乗ったまではよかったのですが、途中の駅に止まったきり電車が動きません。しばらくすると、先行する電車が鹿に衝突したとのアナウンスが…。

「鹿に衝突だと？　そんなことあるんだ…。ま、山の中走るしな、身延線。」

「あんまり遅れると、バスに間に合わないかも。朝イチのバスに乗れないと、次は4時間後なんだよなあ。どのくらい時間かかるだろ？　30分くらいで動けばいいけど…。」

しばらくすると、鹿を回収してから運転再開するとのアナウンス。

「そりゃ線路に鹿が横になってたら電車も動かんわな。」

「鹿の回収って、電車の運転手がやるのかな？　だとしたら、運転手も楽じゃないねえ。」

幸い遅れは25分にとどまり、無事朝イチのバスに間に合った西さん北さん。 早川に沿った道をバスに揺られます。

バスの車窓からの景色

「お、だんだん秘境っぽくなってきた。なかなかきれいなとこじゃん。」

「紅葉シーズンだからね。前に来たときは夏だったから、次は秋に来ようと思ったんだよ。」

バスの車窓からの景色

「なるほど。…でも考えてみたら、バスで行けるんなら、ぜんぜん秘境じゃないんじゃ…。」

「確かに。でもまあ、一応秘境って言ってるし、コンビニも無いし。」

「コンビニ無いの！？　じゃあ秘境だね。間違いない。」

1時間以上かかって、ようやく奈良田温泉に到着です。

奈良田湖

「着いたー！　でも景色見てたら、意外と退屈しなかったな。」

「じゃとりあえず、女帝の湯に行きますか。まだちょっと早いけど。」

外観

女帝の湯の営業開始は9時です。奈良田湖を眺めたりしてしばし待つ西さん北さん、オープンと同時に入館しました。

「へえ、土間なんだな、ここ。昔の民家みたい。」

「確かに。古い家を再生したのかな？　どうだろ？」

曲がりくねった通路を進んで、外廊下を歩いて別棟へ。浴室に到着です。

浴槽 (湯温ぬるめ)

「お、窓が大きい！　湖が見える！」

「景色もいいけど、お湯がいいんだよ、ここは。このヌルスベ感。」

「なるほど。それにすごい湯の花！　湯船の底に降り積もってるじゃん！」

浴槽 (湯温普通)

「この湯の花が、ヌルっていう感じでいいだろ？」

「ああ、ホント。確かにこのお湯は普通じゃないな。それに、湯船のこっちとそっちで温度が違うんだ。うーむ、長湯したくなるのもわかるなあ。」

しばし湯を愉しんで、湯上りは休憩室で休憩。

休憩室の障子窓からの眺め

「ほー、この障子窓から見える景色も、なかなか良いじゃん。」

「確かに。やっぱり秋に来るのは正解だね。」

休憩室でまったりしていると、そろそろお昼の時間です。ランチは近くにある「古民家カフェ鍵屋」へ。

古民家カフェ鍵屋 外観

「鹿肉のトマト煮っていうのにしよう。」

「ん、限定10食・鹿パスタってのがある。限定と言われちゃ、これにするしかないでしよう。」

「このあたりはジビエ料理がけっこうあるらしいよ。鹿肉もメジャーなのかもね。」

「この鹿、今朝、身延線にひかれた鹿だったりして。」

「ああ、だから鹿を回収してたのか。ひきたての新鮮な鹿肉だから、さぞや美味しく…って、そんなわけないだろ！」

古民家カフェ鍵屋 前庭

とりあえず鹿料理のランチを堪能した西さん北さん。午後は西さんがぜひとも再訪したかった立ち寄り湯に行きます。（→奈良田温泉 白根館へ続く）

（2024年 11月）